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機器に適用されるRTCADO-160Cに基づき測定を行なったが、この基準と比較すると低周波数域で一部放射レベルが逸脱したものもある。但し、30MHz〜1GHzではいずれもDO-160Cを満足している。なお、機内持ち込み携帯用電子機器からのEMIの可能性を調査したRTCAのSC(特別委員会)156の報告書D0-199においても測定の結果D0-160C基準を超える放射レベルを有する機器があったことが同様に報告されている。
今回の測定はRTCAD0-160Cに示される測定方法を採用しているが、先の測定手順からも明らかなように、被測定機器は接地板(金属板)の上に置いた状態で測定しており、乗客が座席に着席し使用している状態を正確にシミュレートしているとはいえない。1996年8月20日に発行されたDO-199の続編であるDO-233(資料-B参照)では金属板は非導電性の板に変更され、高さは80cmにして測定が行われているが、これは携帯用電子機器の実際の使用状況をより正確にシミュレートしようとしているためである。
携帯用電子機器からのEMIが、影響を受ける航空機システムに到達するまでには経路損失が存在する。経路損失とは、客室内の携帯用電子機器から放射された信号が影響を受ける航空機搭載機器やシステムに到達するまでに起こる減衰のことを言い、その程度は経路損失係数で表される。例えば、座席にある携帯用電子機器からのEMIが客室内の仕切り、床、化粧室、ギャレー等を通過する際に減衰が起こる。また、信号源(携帯用電子機器)と影響を受ける側までの伝搬距離が長ければ当然減衰すなわち経路損失は大きくなる。(例えば、機体内外の様々な部分で反射しながら伝搬して行くと伝搬経路は長くなる。)低周波の場合には経路損失の一部である機体外板による損失の影響が大きい。従って、経路損失は機体によって異なり、また周波数によって異なって来る。DO-199においては、B727、B737、B757、DC-10等の機体について、航空機の通信・航法システムの周波数帯での経路損失係数の測定が行われている。今回の測定でDO-160Cの基準を逸脱している周波数帯は、ほとんどが1MHz前後およびそれ以下の周波数帯であるが、DO-199においてはこの周波数帯に該当する経路損失係数データの一例として、B727で測定された46dB(平均経路損失係数)という値が示されている。
航空機搭載機器やシステムに影響があるかないかを判断するためには、航空機搭載機器やシステムが影響を受けるEMIのレベルがどこにあるのかを知る必要があり、且つ、これに携帯用電子機器の放射レベルおよび経路損失係数のデータを加味して総合的に判断しなければならない。このため、本年度は代表的な携帯用電子機器のEMIの放射レベルについて測定を行なったが、さらに種々の機体についての経路損失、航空機搭載機器やシステムが影響を受けるレベルについてのデータが必要になる。また、複数個の電子機器が同時に使用された場合の影響なども考慮すべきであろう。従って、測定結果の中にはD0−160Cの基準を超えた放射も見られるが、これをもって即座に危険と判断するのはやや早計と考える。
今後は携帯用電子機器からのEMIが航空機システムに到達するまでの経路のモデル化及びそれに基づく測定等を実施し判断基準を示しうる測定方法を確立していく必要があろう。

 

 

 

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